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サックスと日常と非日常の記録

読書録および文字情報に対する所感

【再レビュー】カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」

この物語はキャシー・H ( =キャス ) が、淡々と訥々と言葉を探しながら綴るモノローグであり、そしてキャスとルース、トミーをめぐる彼らの20年、30年のクロニクルである。そこにはボクらの50年くらいの人生が凝縮している。彼らは、不条理、ささやかな抵抗…

色のない小説 カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」

薄い靄がかかっている。読み始めてから読了した今も、ボクの頭の中にずっと薄い靄がかかっている。イギリスの田園地帯の、海に程近い街の、薄い靄の彼方で、キャス、ルースそしてトミーが、友情、愛憎、別れ、かりそめの人生を生きる。遠い日の記憶を宿しな…

心ほっこり「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」。

「鴨川ホルモー」から始まった破天荒な関西三部作の次がこれ?「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」なんて、幼児向けの絵本シリーズをパクったようなタイトルは一体なんなんだろう、と疑念満載で読み進めると。。。この人はなんて多才多彩な人なんだろう。 小学…

「プリンセス・トヨトミ」 万城目学の大阪愛

大阪愛。「プリンセス・トヨトミ」は、万城目学の大阪そして大阪の人々への愛情を描いた作品。 万城目さんの作品は、優れたエンターテイメントであると同時に、作を重ねる度に、人間への洞察や愛着がどんどん深まり、作品としての深みが増しているように思う…

「鴨川ホルモー」??ジェットコースター小説!

今週のお題「読書の秋」 「鴨川ホルモー」?なんじゃそりゃ?? ボクは千葉の鴨川シーワールド近くのホルモン焼き屋で繰り広げられる、人情味溢れる小説(居酒屋兆治のイメージね)と勝手に思い込んでいて、何年もスルーし続けてました。 まさか京都を舞台に…

川上弘美「センセイの鞄」

今週のお題「読書の秋」 少し前の日経新聞の夕刊連載で「森へ行きましょう」という不思議な小説があった。 ルツという主人公の女の物語が、異次元で同時進行に複数繰り広げられる。それも多次元で。 それぞれのルツ、留津、、、、は、林くんやら 〇〇さんや…

あおによし 秋の奈良

今週のお題「読書の秋」 秋と言えば、紅葉。紅葉と言えば、京都、奈良。でも奈良は京都と違ってびっくりするほど何もない。あるのは、原っぱ(=遺構)と山と寺、そして鹿。悠久の時がたおやかに流れてるアナザーワールド。 万城目学の「鹿男あおによし」。 …

建築家 安藤忠雄

安藤忠雄=アンドータダオというオッサンは、コンクリ打ちっ放しばっか作る、いつも目ん玉ひんむいた、黒タートルばっかり着てる、元ボクサーの、アクの強い大阪の、世界的建築家、とばかり思ってました。が、悔い改めます。 この本は示唆に富んでる。愛に溢…

マイルス・デイビス自叙伝

「マイルス・デイビス自叙伝�・�」読了。1940年代から50年近くもジャズの最先端を走り続けた男。 そういえば、クールジャズもハードバップもモードもフュージョンも全部彼が始めた。 最晩年は、なんとプリンスと一緒にやろうとしてた! これだけ次々とスタイ…

司馬遼太郎「翔ぶが如く」

司馬遼太郎「翔ぶが如く」約1ヵ月要しようやく読了。 フォトリーディングも使ってみるものの、じっくり読みたい病のため結局熟読玩味してしまいました。 この作品は、維新後の日本の中央集権化に向け現実的に冷徹に突き進んだ大久保と、維新最大の功労者で…

津田大介・孫崎亨 他「日本人が知らないウィキリークス」

「日本人が知らないウィキリークス」読了。ウィキリークスの概略から、技術解説、ジャーナリズム、イデオロギー、国家へのインパクトに至るまで、多面的に論じられている。ウィキリークスは、巷では、いかがわしいハッカーの運営する内部告発サイトのように…

山下正男「論理的に考えること」

コンサル系のロジカンルシンキングってどうだろう。拙速を良しとするビジネスツールとしては確かに使えるけれど、どうも底の浅さが透けて見えてしまう。。。ならば、いっそのこと「論理学」をと思い直し、高校時代に入手した「岩波ジュニア新書」なるシリー…

阿刀田高「ギリシャ神話を知っていますか」

20年近く前に入手したものの、そのまま本棚の意匠の一部になっていたこの本が、幾度のリストラにも何故か耐え、ようやく陽の目を見た。読み始めてみるととても面白い。読後に強く残った印象は、神々の振る舞いの奔放かつご都合主義。そう、ギリシャにおいて…

宮元健次『神社の系譜 なぜそこにあるのか』

神社は「自然暦」に基づき、その配置が決定されているという興味深い考察。例えば、鹿島神宮の夏至の日の出の方向にタケミカヅチノ神が上陸した明石の浜神門があり、その逆の冬至の日没のライン上には富士山が配されている。また同様に夏至の日没の方向には…